抱いていた「溶接」への憧れ

溶接工として、主にステンレスのTIG(ティグ)溶接を担当しています。
TIG溶接というのはタングステンの電極棒に電流を流し、溶接する材料との間に高温のアーク(放電)を発生させて、その熱で材料同士を溶かして接合する溶接方法です。

私は以前、レーザー加工とターレットパンチプレス加工の複合機のオペレーターをしていたのですが、その時に溶接作業場を見ていて「材質同士を繋ぎ合わせる溶接ってすごいな」という憧れを密かに抱いていました。

他工程と同様に「ものづくり」に欠かせない技術である溶接は、私にとって『自身の手が製品に繋がっている』ということを何よりも実感できる素晴らしい仕事です。

「自分の電気と手の速さ」を見つける

溶接工として勤めて3年目になりますが、『金属の歪みを最小限に抑えながら電気と熱によって接合する』という溶接の世界はとても奥が深くて、技術の勉強に終わりはありません。

溶接工はそれぞれ皆が「自分の電気と手の速さ」というものを持っているんです。
例えば厚さ1ミリの板を溶接する時、設定した電流に対して溶接棒を持つ手の動きが遅いと、接合面が高温になりすぎて板が溶けてしまいます。反対に手が速すぎると、材質同士をきちんと接合できません。
そのため、そのわずかな狭間の中で絶妙な電流と手の速度を見つけ、感覚的に身につけることがとても重要になります。

様々な図面を正確に読み取って、材質とその厚さに合わせた『自分の電気と手の速さ』を身につけ、美しいビードで十分な強度に接合する技術を日々磨いています。

溶接のスペシャリストを目指して

私には3名の尊敬する溶接工の先輩がいて、毎日たくさんの技術を教わっています。これから様々な材質や形状の溶接の経験を積み、先輩方のように「できないものはない」と言えるような溶接工を目指しています。
今はアルミ溶接の勉強をしていますが、今後は溶接の後工程として鏡面、ヘアラインなど、仕上げまでの仕事も覚えたいと思っています。

佳秀工業では「大きな声で・きびきび行動・自分から挨拶・明るい笑顔」という行動四原則を実施していて、職場でも皆がお互いを気遣い合い、声かけなどが自然とできるアットホームな環境です。
困った時などにはすぐに相談することができるので、ひとりで悩むこともなく元気いっぱいに働くことができています。

深まった家族との絆

私が溶接を始めたことで家族も溶接に興味を持ってくれるようになりました。
私には5人の子どもがいるのですが、実は長女も溶接工として働いていて、家族共通の話題として趣味の音楽と同じように、溶接の話で盛り上がることができます(笑)

職場でも家庭でも「とにかくひとりぼっちの人を作らない!」という想いで周囲に目を配ることを大切にしています。

溶接に懸ける想いと夢

当社では新幹線や食品製造装置の部品、医療・介護用品に使用される部品など、ステンレスやアルミの製品も多く取り扱っています。


最初はただの金属でしかなかったものが繋ぎ合わさることでひとつの部品となり、その部品が集まって人の役に立つ機械や装置になっていると思うと、とてもやりがいと責任のある仕事だなと感じています。

今の私の夢は2つ。1つは自分が溶接した部品が永くお客様に使用されることで、多くの皆さんに喜ばれる製品作りに貢献すること。
そしてもう1つはその製品が機械などに組み込まれて、実際に稼働している姿を自分の目でこっそり見に行ってみたいというものです。そんな夢も密かに抱いています(笑)