佳秀工業では、金属・非金属を含めて年間に約400種類の材質の加工を行っています。『金属研究所』のコーナーでは、進化を続ける金属の新規素材や、様々な加工法の特徴について解説しています。今回は溶接シリーズとして「炭酸ガスアーク溶接」について紹介します。

前回のブログ▶︎奥深き溶接の世界〜TIG溶接編〜 

目次
●炭酸ガスアーク溶接(CO2溶接)とは
●炭酸ガスアーク溶接の特徴
●炭酸ガスアーク溶接の歴史

炭酸ガスアーク溶接(CO2溶接)とは

炭酸ガスアーク溶接(C02溶接)とは、その名の通り、炭酸ガス(二酸化炭素)を使用した溶接方法で、TIG溶接などと同じガスシールドアーク溶接に分類されます。
この溶接方法ではコイル状になっている溶加材(ワイヤー)が溶接機(トーチ)へ自動的に供給されるため、片手に持った溶加材を溶かしながら行う手溶接(被覆アーク溶接)と比べて、アークタイム率や溶接速度などで優れています。
溶加材の供給は自動ですが、溶接自体は手動で行う必要があるため「半自動溶接*」とも呼ばれています。

※半自動溶接は使用するガスの種類によって「炭酸ガスアーク溶接」「MIG溶接」「MAG溶接」の3種類に分けられ、それぞれの特徴によって溶接可能な材質などが異なります。

炭酸ガスアーク溶接の特徴

炭酸ガスアーク溶接は、加工部の酸化を防ぐシールドガスに炭酸ガス(CO2)を使用し、主に鉄などの二酸化炭素と化学反応を起こさない素材に使用される溶接方法です。
母材と溶接機を通電させ、その間に発生させた高温のアークで、自動的に供給される溶加材(ワイヤー)を溶かし、母材同士を接合します。
炭酸ガス溶接では、アークの勢いで飛ばされた溶滴(液状に溶けた溶加材)が母材に固着するスパッタや、溶化部が空気を含んでできる気孔、金属内の元素との結合により生じる非金属(スラグ)などが発生してしまう欠点があります。

一方で、高温下にさらされた炭酸ガスが一酸化炭素と酸素に分解される際、解離熱によって起こるサーマルピンチ効果でアークは収縮します。
熱が局所的に集中するため溶け込みが深くなり、高い溶接強度を確保することができるという利点を持っています。
建設機械や造船、車両関係などに広く使用される溶接工法です。

炭酸ガスアーク溶接の歴史

半自動溶接は1920年から1930年頃、当時溶接自動化に対する要望が高まっていたアメリカで開発された溶接方法です。
当時は消耗電極にフラックスやその他様々なガスを使用する溶接方法が研究されており、1926年には発明家であるジョン・C・リンカーン*が安価で手に入る炭酸ガスを使用した溶接方法を提唱、後に特許を取得しています。

※ジョン・C・リンカーン(英:John C. Lincoln):アメリカの発明・起業・慈善家であり、生涯で電気機器に関する特許を55件取得。1895年には溶接機や切断機などを開発販売するリンカーンエレクトリック社を設立した。

しかし、1926年に行われたゼネラル・エレクトリック社*による実験で「炭酸ガスを使用した溶接は、溶加材(溶着金属)の酸化が酷く加工方法としては不適切」と結論づけられます。
これにより炭酸ガスは「溶接で使用できないガス」と位置づけられ、溶接時に酸化を起さない不活性ガスの研究が行われるようになりました。
その後1936年には不活性ガスのみを使用したMIG溶接工法が開発されています。

※ゼネラル・エレクトリック社(英:General Electric Company):トーマス・エジソン(英:Thomas Alva Edison)が設立したエジソン電気照明会社を起源とし、様々な企業を吸収合併しながら航空機エンジン・産業ソフトウェア・発電及び送電機器(火力発電用タービンやモーター他)など、幅広い分野に取り組む世界最大のアメリカ大手総合電機メーカー。多国籍コングロマリット企業(複合企業)とされる。

ゼネラル社の実験以降、30年の間「炭酸ガス=溶接に向いていない」として大々的な研究は行われていませんでしたが、1953年(昭和28年)に欧州のリューバフスキー(K.V.Lyubavskii)、ノボシロフ(N.M.Novojilov)の2人の研究者が「炭素鋼とステンレス鋼の溶接時、使用するワイヤーに適切な脱酸剤が含まれていれば、炭酸ガスでも満足すべき溶着金属が得られる」という内容の論文を発表し、炭酸ガスを使用した溶接工法の研究が再開されました。

翌年、アメリカのバーナード社からフラックス入りのワイヤーを使用した軟鋼用の炭酸ガスアーク自動溶接装置が市販され、使用する炭酸ガスが低価格であったことや高能率で適用範囲も広いことから、徐々に炭酸ガスアーク溶接の施工例が増えていきます。
日本では1956年(昭和31年)に初の国産炭酸ガスアーク溶接機が、1961年(昭和36年)にはフラックス入りワイヤーが国産化され、販売が始まりました。
ちょうどこの頃、活気づいてきた国産車の製造にこの溶接方法が取り入れられ、1970年代には造船や建築分野などで採用する企業が増加していきました。
現在では鋼材の溶接分野において最も多く使用されている溶接方法です。

終わりに

一度は「溶接にならない」とまで言われた炭酸ガス(CO2)アーク溶接ですが、発明から100年近く経った現代では自動車や新幹線、船など様々な加工に活用される欠かせない工法となりました。
火花が散る溶接の加工風景は、鮮明で目を奪われる格好良さがあります。

※溶接時に発生する光を直視し続けると紫外線により炎症を起こすことがあるため、
見学の際は注意が必要です。

興味のある方はぜひ実際に見てみてくださいね。
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(※2020年5月現在、新型コロナウイルスの感染拡大防止のため申し込みは受け付けておりません。)

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