佳秀工業では、金属・非金属を含めて年間に約400種類の材質の加工を行っています。技術ブログでは、進化を続ける金属など新規素材の特徴について解説しています。

今回の技術ブログでは近年需要が増加している「CFRP(炭素繊維強化プラスチック)」についてご紹介します。

目次
●CFRP(炭素繊維強化プラスチック)って何?
●CFRPの特徴とデメリット
 ・特徴
 ・デメリット
●CFRP誕生までの歴史とその後
●CFRPが使用されている製品
●高まり続けるCFRPの需要

CFRP(炭素繊維強化プラスチック)って何?

CFRPとは「Carbon Fiber Reinforced Plastics」の略で、『炭素繊維強化プラスチック』のことです。単にカーボン樹脂やカーボンとも呼ばれています。
このCFRPという材質はプラスチック(合成樹脂)を炭素繊維で強化した複合材で、「軽量」「高強度」「高剛性(たわみにくい)」という機能性を兼ね備えており、スポーツ用品から航空機部品、自動車部品など幅広い産業分野で活用されています。
炭素繊維は軽く、強く、細い素材ではありますが、いわゆる“糸束”“織物”のような状態です。ですから、炭素繊維の種類・量・方向などによってCFRPの性能・機能は変わります。従ってCFRPという素材に“標準品”というものはありません。

CFRPの特徴とデメリット

・特徴

・軽量

本来プラスチックは弾性が低く、脆く壊れやすいため構造材としては不向きな材質とされています。そこで強度・弾性に優れた炭素繊維を強化材として用いることで、「軽くて高強度」を実現する材質としてCFRPを成形することができました。
一般的に軽い材質といえばアルミやチタンが挙げられますが、CFRPはその2種の金属よりも軽く、鉄と比べるとその比重は4分の1ほどになります。

・高強度
強化材として炭素繊維を加えたことにより、CFRPの強度は鉄の10倍、弾性は7倍にもなります。加えて耐摩耗性耐熱性耐酸性導電性にも優れているため、金属の代わりとなる最先端材質とされています。

・デメリット

鉄よりも軽くて強く、能力としては申し分ない材質ですが、材質としてのコストが高いことやリサイクルが難しい、加工が難しい(加工コストが高い)などのデメリットがあるため、まだごく一部の分野(航空機、レーシングカー、高級スポーツ用品、医療機器など)でしか用いられていません。
現在はCFRPのリサイクルの可能性について様々な研究が行われています。

CFRP誕生までの歴史とその後

CFRPの歴史は19世紀にトーマス・エジソンが発明したフィラメントから始まります。
フィラメントとは電球に電気を通すための細かい糸状の構造のことです。
エジソンはフィラメントの素材として日本の竹を蒸し焼きにして炭素化した“炭素線”を使用しました。
これが世界初の炭素繊維であると言われています。(現在ではフィラメントの素材はタングステンに移行しています)

その後、1950年代半ばから炭素繊維の研究開発が本格化していきます。アメリカでロケット開発のために耐熱性の高い素材が必要になり、レーヨン繊維を原料とした炭素繊維が生産されるようになりました。
日本では1961年に大阪工業技術試験所で炭素を研究していた進藤昭男博士がポリアクリロニトソル(PAN)系繊維を使用した炭素繊維を発表しています。

1970年にはPAN系繊維を提供していた東レ株式会社が炭素繊維研究に本格参入し、釣竿、次いでゴルフクラブなどのスポーツ分野において炭素繊維の需要を創出。1972年には炭素繊維で作られた鮎竿が釣具見本市で高く評価され、炭素繊維が市場に進出し始めました。

同年に日本で初開催された太平洋マスターズで炭素繊維製のシャフトのゴルフクラブを使用したプロゴルファーが優勝したことで一気に知名度が高まり、テニスのラケットなどにも炭素繊維が使用されるようになりました。
1990年代にはアメリカのボーイング社が航空機の一部にCFRPを採用し、2003年には胴体や主翼の約550%にCFRPを使用したことでCFRPの性能に対する信用は確かなものとなりました。
2010年から現在にかけてはスポーツ用品の他に自動車の部品やロボット部品、パソコンの筐体など幅広い産業で使用されています。

CFRPが使用されている製品

・釣竿

・航空機の翼や車両機器のフレーム

・スノーボード、テニスラケット、ゴルフシャフトなどのスポーツ用品

・ボンネットなど自動車のボディ全体など

・半導体

高まり続けるCFRPの需要

現在、CFRPの研究は10分の1程度しか進んでいないと言われています。
CFRPの世界シェアの7割を日本メーカが生産していますが、自動車や建材などの素材としての実用化は欧米を中心に進んでいる実状があります。
これからリサイクル技術も発達し、機械の性能の向上を考えると、「CFRP(炭素繊維強化プラスチック)」は私たちにとってより身近な素材となることでしょう。

〈参考〉
JCMA炭素繊維協会 https://www.carbonfiber.gr.jp/material/feature.html

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