佳秀工業では、金属・非金属を含めて年間に約400種類の材質の加工を行っています。『金属・素材研究所』のコーナーでは、進化を続ける金属など新規素材の特徴について解説しています。
今回は身の回りの多くの製品に使用されている「ステンレス」と「アルミニウム」の特徴と違いについて紹介します。

目次
●ステンレスの特徴
・ステンレスが腐食しにくい理由
・ステンレスが使用されている製品
●アルミニウムの特徴
・アルミニウムが腐蝕しにくい理由
・アルミニウムが使用されている製品
●ステンレスとアルミニウムの相違点
・強度
・表面処理の有無
・加工性
●最後に

ステンレスの特徴

通常「ステンレス」「ステン」などの名称でよく知られるステンレス鋼。その比重は約7.6~8.1とされ、これはアルミ(約2.7)やチタン(約4.5)より大きく、銅(約8.9)よりは小さい、鉄(7.8)や炭素鋼(7.8)に近い値です。
これはステンレス鋼が鉄を主として製造される金属であることが理由だと考えられます。その用途や性質によって含有量は異なりますが、概ねクロムが10.5%以上、その他にニッケルやモリブデンなどが含まれている耐食性が高い合金を一般的にステンレス鋼と呼んでいます。
ステンレス鋼が広く使用される理由は、耐食性の高さに加え加工性や強度などの面において優れた能力を持っているからです。近年では製造コストの減少とも相まってその生産量を増加させています。また、ステンレス鋼は品質劣化がほとんどないため、ほぼ100%リサイクル可能です。このように環境に優しい点も多く利用される理由に挙げられます。

ステンレスが腐蝕しにくい理由

ステンレス鋼の表面はnm(ナノメートル)レベルの極薄の膜(不動態皮膜)で覆われています。
この膜は主にクロムと酸素と水酸基が結合したもので、酸素があれば瞬時に再生される性質を持っています(傷の修復は不可)。
この膜がステンレスに含まれる鉄の酸化を防ぐため、屋外や人が触れる部分などの比較的条件が良くない環境で使用してもほぼ錆びることがありません。その優れた耐食性から鉄道車両や医療用品など様々な製品に使用されています。

ステンレスが使用されている製品

・スプーンやフォークなどの食器類、鍋やシンク(流し台)
・医療器具
・ドームの屋根(幕張メッセ・大阪ドーム・ナゴヤドーム等)、屋外モニュメント
・プール槽、貯湯槽など
・鉄道車両

アルミニウムの特徴

アルミニウム合金の比重は約2.7であり、鉄(約7.8)ステンレス鋼(約7.6~8.1)と比べると約1/3と、かなり軽量です。アルミニウム合金は一般的な金属と違い低温に対する耐久度が高く、温度が低くなるほど強度は上がり、液体窒素(ー196℃)や液体酸素(ー183℃)の極低温下でも使用することができます。そのため超極寒*の宇宙で活動する人口衛星や宇宙ロケット、宇宙服などの宇宙産業製品にも使用されています。
熱の伝導率は鉄の3倍ほどで、その特徴から鍋などの調理器具や冷暖房器具の他にヒートシンクなどにも使用されています。
新たにアルミニウムを精錬するには多くのエネルギーを必要としますが、すでに精錬されたアルミニウム合金の製品を溶かし、再生アルミにする際にかかるエネルギー消費量はごくわずかなため、経済的で環境にも優しい材料と言えます。
*宇宙の最低気温=ー270.42℃(絶対零度)

アルミニウムが腐蝕しにくい理由

アルミニウム合金にもステンレス鋼と同様にnm(ナノメートル)レベルの膜があります。この膜はアルミニウム合金の表面が酸化したことでできた膜(酸化被膜)です。
アルミニウム合金は本来酸化しやすい材質ですが、この表面の酸化によってできた強固な膜が内部の酸化を防ぐ役目を果たしています。

アルミニウムが使用されている製品

・自動車(二輪車)、自転車、船、鉄道車両
・太陽光発電機、電線
・エアコン、パソコン

ステンレスとアルミニウムの相違点

強度

アルミニウム合金はステンレス鋼と比べ柔らかいため、たわみや傷など変形が起きやすい材質です。
そのため建築や耐震補強などの高い安全性や耐久性が求められる製品にはステンレスが使用されます。
一方で軽量化が求められる航空機や輸送機器などには比強度*が大きいアルミニウム合金が使用されます。
*比強度=単位重量あたりの強度

表面処理の有無

ステンレス鋼は艶やかで光沢があるため表面処理の必要がなく、そのまま使用されるケースが多い金属です。一方アルミニウム合金の表面はマット調でステンレス鋼のような光沢はありません。
そのため製品によっては表面処理を行い、耐食性や耐摩耗性の向上も兼ねて着色(アルマイト処理*)して使用されています。
*アルマイト処理(陽極酸化処理)=電解処理で人工的に酸化皮膜を生成させる方法

加工性

アルミニウム合金は柔らかいため圧延やプラスなどの加工性が高いというメリットがありますが、熱伝導性率や酸化被膜などの影響で溶接が難しいというデメリットがあります。
その逆にステンレス鋼は高強度のため加工性が低いというデメリットがありますが、溶接はアルミニウム合金に比べると比較的容易とされています。

最後に

私たちの日常に溢れている「ステンレス」と「アルミ」ですが、普段は「金属」として一括りにしてしまうことが多いのではないでしょうか?
用途を意識しながら外を歩いてみることで普段とは違った世界を楽しめるかもしれませんね。

<参考>
ステンレス協会:http://www.jssa.gr.jp/contents/
日本アルミニウム協会:https://www.aluminum.or.jp/