佳秀工業では、金属・非金属を含めて年間に約400種類の材質の加工を行っています。技術ブログでは、進化を続ける金属の新規素材や、様々な加工法の特徴について解説しています。今回は高い需要を誇るウォータージェットが不得意とする素材はあるのかご紹介します。
目次
●ウォータジェットで精度がでないもの
・水に溶ける素材
・薄いガラス材、強化ガラス
・日本刀(切っ先)
●レーザー加工では切れない素材もおまかせ
・熱に弱い素材の切断
・熱で溶けない・導電性がない素材
・電化製品、電動部品なども含むあらゆる複合材
●モノで切れないものはない
近年、ウォータージェット加工機を導入している工場もかなり増えてきました。 その理由はもちろん多くの利点があるからですが、中でも素材を選ばず「なんでも」切れるのはウォータージェット加工機最大のメリットと言えます。

こんにゃくやゴムなどの柔らかいものから、自然鉱物のなかで最高硬度を誇るダイヤモンド*まで、ウォータージェット加工機はあらゆる材質を熱影響なく切断することが可能です。
しかし果たして、本当にウォータージェット加工機で切れないものはないのでしょうか?
※ロンズデーライト・ウルツァイト窒化ホウ素は火山や隕石等に係るため、自然鉱物からは除外しています。機会があればぜひこの2鉱物もテストしてみたいところです。
ウォータージェットで精度がでないもの
2つに、またはいくつかに分けることを「切る」と言ってもいいならば、ウォータージェット加工で切れないものはありません。
しかし完成度や精密さを考えると、いくつか苦手な材料があげられます。
●水に溶ける素材
水溶性プラスチックなどの水で溶けてしまう材料は加工できません。
また、水圧によってよれたり形状が変わってしまう糸や布類もウォータージェット加工には適していません。(廃棄用など精度が不要なものはもちろん可能です)
●薄いガラス材、強化ガラス
ウォータージェット加工は熱や圧力に弱いガラスの切断を得意とします。
ただある程度の厚さがないと加工している衝撃(台や加工の振動など)で破損してしまうため、薄板ガラスには推奨できません。
また受けた衝撃が全体に広がる強化ガラスも、安定した精度を出すのは難しい素材です。
●日本刀(切っ先)
某テレビ番組の実験では、一定の品質を持つ日本刀をウォーターカッターで刃先から切断しようとすると、噴射された水を受け止める面積がなく水流・水圧が左右に往なされてしまう(分散)ため、切っ先からの切断ができなかったことがあります。
もちろん刃幅を横断するように切ることは容易ですが、刀匠によって玉鋼から鍛えられた日本刀に勝つには、専用の治具が必要かもしれません。
ちなみに同じような形状の包丁は、ウォータージェットで切っ先から切断されています。日本刀がどれほど薄く刃先が鋭いかが分かりますね。
レーザー加工では切れない素材もおまかせ
前述以外のすべての材料で、ウォータージェット加工による思い通りの切断が可能です。
他の切断機と比べて特に得意とするのは、熱に弱い素材や導電性のない石材などでしょう。
●熱に弱い素材の切断
高圧水と研磨材(ガーネットなどの砥粒)で素材を削るため、加工時に熱影響がなく熱に弱い素材でも問題なく精度がでます。
穴が多い・長細いなどの形状でも変形することはありません。熱硬化もないため、キリ加工や切削加工が容易に行えます。

●熱で溶けない・導電性がない素材
金属を溶融させ切断するレーザー加工とは違い、ウォータージェット加工では熱で溶けない材質でも問題ありません。
ワイヤー放電加工では不可能な導電性がない素材も得意とします。
石材や樹脂の加工も高い精度で行えるため、ファサードなどの細かで複雑な建築物件にも対応できます。

●電化製品、電動部品なども含むあらゆる複合材
クラット鋼などの材料から、パソコンやモーターなどの電気部品、分析用の試験片等々…様々な材質で作られたものを加工する場合もウォータージェット加工が活用されます。
切断面や内部構造を確認するのに、熱変形もなく素材を選ばないウォータージェット加工は最適なのです。
モノで切れないものはない
硬度や形状に係らず、基本的にウォータージェットの加工技術で切断できないものは多くありません。
あとはそれぞれの機械がもつワークサイズや、3D・5軸などの特徴を生かして、素材や大きさなどに最適な条件を出してやることが重要になってきます。


3000mm×8000mm×300mm (左)
3000×4000×300mm(右)
「うちで切れないのは、人さまとの縁だけ」という代表の言葉のように、当社の機械や技術が多くの方のお力になれるよう、いただいたご縁を大切にして日々研鑽・精進してまいります。
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