佳秀工業では、金属・非金属を含めて年間に約400種類の材質の加工を行っています。『金属研究所』のコーナーでは、進化を続ける金属の新規素材や、様々な加工法の特徴について解説しています。今回は太古より人類が活用してきた「研磨加工」について紹介します。

目次

● 研磨加工のはじまり
● 研磨について
 ・表面処理
 ・バリ取り
 ・砥粒(とりゅう)と粒度(りゅうど)
● 研磨加工の種類
 ・バレル研磨
 ・ベルト研磨
 ・グラインダー(サンダー)
 ・バフ研磨
 ・電解研磨
●最後に

●研磨加工のはじまり

研磨加工の歴史は長く、その始まりは今から約1万年前の新石器時代に遡ります。
それより以前の旧石器時代では、石同士を打ち砕いて鋭くした石器(打製石器)を使用していました。
新石器時代になると打製石器に石や砂利などをこすりつけることで表面を滑らかにし、より鋭利に加工した磨製石器が使用されるようになります。
これが「研磨」のはじまりです。

●研磨について

「研磨」には大きく分けて表面の不要な部分を削る「研削作用」と、光沢や機能性を向上させるために磨く「琢磨作用」の2つの作用があります。

・表面処理

表面を磨くことで加工時についてしまった傷や汚れを除去することができます。
塗装を行わなければならない材質には塗装前処理として、塗装を行う必要がない材質には機能性や見た目の美しさの向上を目的とした工程です。

・バリ取り

バリとは金属やプラスチックの切断、打ち抜き・穴あけ加工の際に発生するトゲのようなもので、カエリとも呼ばれます。
バリは寸法の誤差や混入による精度低下の原因となり、部品・製品そのものはもちろん、精度が出ていない部品が組み込まれたなどは通常よりも早い劣化や故障を引き起こす可能性があります。
またバリはとても鋭利なため、作業者やエンドユーザーが触れた場合に怪我をする恐れもあるのです。
そのため必ず専用の機械などでバリの除去(研削)を行わなければいけません。

・砥粒(とりゅう)と粒度(りゅうど)

研磨加工には砥粒 (とりゅう)と呼ばれる硬度の高い粒状または粉末状の物質を使用します。
この粒の大きさを表すのが粒度(りゅうど)で、粒度が小さいものは粗く、大きいものほど細い砥粒であることを意味します。
身近なところではサンドペーパーも砥粒の付着した研磨器具の1つですが、#100(100番手)と#2000(2000番手)では#2000の方が小さな砥粒を使用しており、より滑らかな仕上げやツヤ出しに適しています。
工業用の砥粒には主に最も高い硬度を持つダイヤモンドや人工ダイヤモンド製のものが使用されています。
しかし、炭素原子の集合体であるダイヤモンドは研削時に高温を発する鉄との相性が悪く、高温下での炭化や鉄への炭素拡散により著しく硬度が低下してしまいます。そのため、鉄を多く含む材質の加工時には、ダイヤモンドに次いで硬度が高く耐熱性に優れ、鉄の作用に反応しないCBN(立方晶窒化ホウ素)を砥粒として使用します。

●研磨の種類

・バレル研磨

タンクなどの研磨容器の中に研磨石*や水、コンパウンド*などを入れて研磨する方法でかつては樽(barrel)型の容器を使用したことからバレル研磨と呼ばれています。
タンクを回転・振動させることで摩擦を起こし、製品のバリや角を削ったり(R付け)、表面を滑らかにすることができます。
海岸に落ちているガラスの角が丸くなっているのもバレル研磨と同じ原理です。

※研磨石(メディア)
製品の表面を磨くための研磨助剤の一つ。
大きく5つに種類が分かれており、サイズや形状、材質によってその仕上がりは変化する。

※コンパウンド
研磨効果を高めるために使用され、液体のものや粉体のものがあります。
加工された面は錆を防ぐ酸化膜が剥がれている状態になるため、表面を被覆することで酸化を防ぐことができます。

・ベルト研磨

名前の通りベルト部分(エンドレスベルト)が回転する研磨機です。
使用するベルトごとに粒度の違う砥粒が付着しており、ベルトを変えることで粗~仕上げまでの多様な加工が可能です。
フェルトベルトを使用しての鏡面処理やベルトの稼働方向が一定のためヘアライン(HL)仕上げを行うこともできます。

ヘアライン(HL)仕上げの様子

※ヘアライン(HL)
表面仕上げ方法の一つで毛髪のような細いラインがついているのが特徴。
傷が目立ちにくい工法のため、主にインテリアや鉄道関係、シンクなどに使用されている。

・グラインダー(サンダー)

ハンディタイプと卓上タイプがあり、卓上タイプはドリルや刃物を研ぐ際に使用されることが多く、製品の表面仕上げに関しては主にハンディタイプが使用されています。
ディスクと呼ばれる砥石を変えるだけで研削・研磨・ツヤ出しなどを行うことが可能で、金属の他に木材から石材の加工をすることができるため、金属加工業界でなく建築業界やDIYなどでも幅広く使用される加工方法の一つです。

・バフ研磨

バフ研磨とは綿や麻、フェルトなどの柔らかいバフ(バフホイール)で加工する方法です。
バフの材質を変えることでバリ取りを行うこともできますが、主にバフ研磨では表面に残っている小さな傷や付着物(汚れやゴミ)を除去し外観の美しさや平滑度を上げることを目的としています。高速回転するバフに押し付けて研磨するため、かける力や時間などで光沢具合の変化やムラにつながるため、長年の経験や感覚が必要になる加工方法です。

・電解研磨

様々な研磨加工の中でも非常に細かい仕上げが可能なバフ研磨ですが、磨きによって金属を削っている以上研磨跡などの微細な凹凸までを消すことはできません。そのため、より高精度で高いクリーン性が求められる場合にバフ研磨の後工程として使用されるのが電解研磨です。
この加工では「電気は凸部に流れやすい」という性質を利用し、研磨液に浸けた製品に通電することで金属の凸部を優先的に溶かし、表面を均一に平滑化します。滑らかになった表面には汚れが付着しにくいだけでなく、溶解の過程で生成される酸化被膜によって高い耐食性を生じるため、医薬品や食品関係の製品に利用される研磨方法です。

●最後に

石器時代に石同士を擦り合わせて始まった研磨加工技術は、時代とともに様々な工法を確立しながら進化してきました。
今では多くの金属製品に研磨加工が施されるようになり、日常でもよく目にする加工の1つとなっています。
「金属加工」や「研磨」という言葉に馴染みがなくても、角のない滑らかなスプーンやビルの美しい外壁など、私たちも知らず知らず「ものづくり」に触れているかもしれませんね。
佳秀工業では自社内に研磨加工場をもち、ヘアラインや#400などの加工も行っています。
切断から研磨・塗装を含む組立までの一貫加工が可能ですので、製造に関することでお悩みの方はお気軽にご相談・お問い合わせください。

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