佳秀工業では、金属・非金属を含めて年間に約400種類の材質の加工を行っています。技術ブログでは、進化を続ける金属など新規素材の特徴について解説しています。
今回はワイヤー放電加工とウォータージェット加工を比較!それぞれのメリットとデメリットについて紹介します。

  1. ▪️ワイヤー放電加工とは
    ・ワイヤー放電加工のメリット・デメリット
  2. ▪️ウォータージェット加工とは
    ・ウォータージェット加工のメリット・デメリット
  3. ▪️ワイヤー放電加工とウォータージェット加工の比較
  4. ▪️さいごに

ワイヤー放電加工とは

ワイヤー放電加工はその名の通り放電加工の一種です。
放電加工には、電極から生じるアークで掘るようにして加工する「形(型)彫放電加工」と、ワイヤーからアークを発生させ材料を溶融させながら糸鋸のように加工する「ワイヤー放電加工」の2種類の方法があり、ワイヤー放電加工は別名「ワイヤーカット」とも呼ばれます。

ワイヤー放電加工のメリット・デメリット

メリット

ワイヤー放電加工のメリットは、レーザー加工のおよそ1/10の±0.005mmという非常に高い精度で加工ができることです。
加工中、ワイヤーと材料の間では6,000~7,000℃のスパークが1分間あたり数万から数百万回も発生していますが、絶縁性の高い純水(脱イオン水)や加工油で満たした水槽内で加工するため、加工部に発生する熱は水中へ拡散し、歪みや焦げなどの熱影響が出ることはありません。
電気伝導性がある材質であればハステロイやインコネルのような難削材や極厚材であっても高い精度で加工することが可能です。
その正確さから医療やエネルギー関連部品などにも多く活用されています。

◆ デメリット

一方でデメリットは加工速度が遅いことです。
ワイヤー放電加工で使用するワイヤーは直径0.1~0.3mmのものが一般的ですが、材質や板厚に合わせて髪の毛よりも細い0.02mmのワイヤーを使用することもあります。
ワイヤーが細くなるほどアークで溶融する範囲も非常に小さくなり、毎分数ミリ程度しか加工が進まないため、サイズの大きな製品や複雑な形状の量産品などの加工には不向きと言えます。
また電気電導性がない材料はアークが発生しないため加工することができません。

ウォータージェット加工とは

ウォータージェット加工も名前の通り水を使った加工方法です。
専用の超高圧ポンプによって加圧(600Mpa)された水を音速の約4倍の速さでノズルから噴出し、材料を切断加工します。
水の勢いのみで加工するピュアウォータージェット加工と、研磨剤(サンドブラストガーネット)を混入させて切削能力を向上させたアブレイシブウォータージェット加工の2つがあり、加工精度や材料の素材に応じて使い分けされています。

ウォータージェット加工のメリット・デメリット

メリット

ウォータージェット加工の最大のメリットは加工できる材質の多さです。
軟鋼やバネ鋼はもちろんのこと、クラッド鋼(圧着材)やチタン・ハステロイなどの難削材、加えてワイヤー放電加工では難しい電気伝導性のない非金属(ゴム、石材、ガラスなど)の加工も得意とします。
近年、航空機や自動車、新幹線、船舶などの部品に活用され需要が高まっている炭素繊維強化プラスチック(CFRP)のような複合材の加工も可能です。
またレーザー加工のように材料を溶融させて切断するのではなく、水や研磨材の勢いで削り取るウォータージェット加工では、素材に熱の影響が出ることはありません。
そのため狭い範囲に切断が密集するようなデザインでも反りや歪みのない精密な加工が可能です。
さらに「熱影響が少ない=切断代が少なく済む」ことから、熱を発生する加工法よりも材料歩留まりが向上し、特に希少材料を使用する場合には大幅なコストダウンに直結します。

ウォータージェット加工についてもっと詳しく知りたい方はこちら▼

◆ デメリット

使用する水の特性上、次のようなデメリットが挙げられます。
ガラスや樹脂なども切断可能なウォータージェット加工ですが、水圧や振動による割れなどを防ぐためにはある程度の厚さが必要となります。
また、板厚や材料の形状によっては水流を受ける面(オモテ面)と貫通される面(ウラ面)でその圧が変わり、製品寸法に若干の差(テーパー)が出てしまうため、水圧やノズル角度の調節などの対策が欠かせません。

精度に関しては超精密加工時のワイヤー放電加工には及びませんが、難削材の1次加工や薄物の重ね切りなど、ウォータージェット加工の特徴を活かした加工をすることで十分な精度と時間(=コスト)短縮の実現が可能です。

ワイヤー放電加工とウォータージェット加工の比較

ワイヤー放電加工ウォータージェット加工
加工できる素材電気伝導性のあるものに限る(水に溶けるもの以外)基本的にどの材質にも対応できる
加工精度±0.005mm±0.1~0.5mm
加工速度非常に遅いワイヤー放電加工の約10倍の速さ
加工できる板厚300mm300mm
*材質・板厚で異なる

ワイヤー放電加工は難削材でも高精度の加工が可能なうえ、バリの発生もなく2次加工を必要としません。
ですが、後工程の時間を加味しても加工速度が著しく遅いため、量産や製作期間の短いものには適していません。加工できる材質については電気導電性のあるものに限られます。

ウォータージェット加工は難削材を含む金属や非金属など、水に溶けるもの以外ほぼ全ての材質を加工することができます。その加工速度はワイヤー放電加工に比べおよそ10倍、これは「加工時間=コスト」となる両加工機において、ウォータージェット加工の方が費用削減できる可能性が高いことを意味します。しかし、ワイヤー放電加工ほどの高い精度を出すことができないため、機械加工などの2次加工が必要になる場合があります。

さいごに

日々「より強い、新しい材料」を求めて研究が続く現代では、ワイヤー放電加工やウォータージェット加工のような高い性能を持つ機械の需要はどんどん高まっています。
今回の比較ではどちらにもメリット・デメリットがあることが分かりましたが、今後、新たな技術開発や改良によって素材と同じように加工方法も進化していくことが考えられます。
もしかしたらどちらかの加工がデメリットを克服して勝敗を決するときが来るかもしれませんね。

佳秀工業ではウォータージェット加工機を54台大型五面加工機を3台保有しています。
切断だけでなく後工程までを自社で一貫してお受けすることで、安定した品質と納期でお客様のお手元に製品をお届けしています。
難削材やその他の材質の加工でお悩みの方はお気軽にご相談ください。